おくどさん研究会趣意書

我が国は古代から四季折々のうつりゆく自然の中で、瑞穂の恵を頂き、火の神、
水の神を祀り、“おくどさん”を使って食事をつくってきました。しかし、近年の
科学技術の発達により、食文化をはじめ暮らし方が大きく変化しています。
そんな中、今も変わらず竃(かまど)を使用して米や小豆を炊いている事例が残っています。

“おくどさん”とは京言葉で竃のことを意味します。

竃は別名「くど」とも呼ばれますが、その「くど」にその頭に「お」をつけ、
さらに最後に「さん」までつけます。おいなりさん、おかいこさん、おかみさん、
おかゆさん、おつかれさんなど日本語の中でそのような言葉は決して多くありません。
そこには敬いと同時に親しみ等の気持ちが込められているのです。

さて、おくどさんで使う火は、私たちと切っても切れない関係があります。人は
火を使うことで技術を発展させ、文明をつくり上げてきました。火は人を暖め、
潤し、守り、癒し、そして送ってきた。今日では科学技術の発展に伴い、人々の
食や暮らしも大きく変化し、私たちが火に接することは多くありません。

かつて“おくどさん”は、京の人々が暮らす京町家の台所の中心に位置し、
そこに暮らす家族の暮らしを支え見守ってきました。私たちの命を繋ぐ食べ物を
より美味しくし、家族の絆を深める役割をも果たしていました常に清潔に保ち、
熱のあるうちに専用の雑巾で拭くと、それによって漆黒の底光りしたおくどさんは、
まるで家族の一員であるかのように、どっしりと威厳があり、感謝と敬意の対象でした。
今日その姿をほとんど目にすることはできません。

しかし、“おくどさん”は過去の遺物になったわけではなく、心ある人の手で
稼業の中で使い続け守られており、新しいタイプの洗練された形のおくどさんも
登場してきています。五感を刺激し豊かな心を呼び起こすものであることも含めて、
忘れられてきた感性や、京都の伝統や風習、そして新たな価値の発見も究めて、
“おくどさん”から学びたいと思います。

“おくどさん研究会”は、こうした“おくどさん”の文化と歴史に学びながら、
積極的に“おくどさん”を次世代へ伝え、京の食文化を後世に伝えていくために、
“おくどさん研究会”の設立を発起する次第です。

平成21年8月31日

研究会活動風景